災害時要支援者の避難への課題について

  • 2018.03.18 Sunday
  • 20:49

 日本は、世界の中でも自然災害が発生しやすく、毎年、各地でその被害により多くの人命や財産等が失われています。本市においても例外ではありません。近年でも、2012(平成24)年の南部地域の集中豪雨、2013(平成25)年の台風18号、昨年の台風21号による災害が発生しています。

 政府の地震調査委員会は2月9日、南海トラフ沿いで、マグニチュード8〜9級の大地震が30年以内に起こる確率が「70〜80%」に高まったと発表しました。大津市も「南海トラフ地震防災対策推進地域」に指定され、予想される震度は、6弱から6強とされています。

 発生からもうすぐ7年となる東日本大震災では、犠牲者の7割以上が高齢者でした。また、障害のある人の死亡率は、全住民死亡率の2倍に及んでいます。ここでいう障害者とは、各種福祉手帳の所持者であり、手帳を所持していない障害者は含まれていません。精神障害や難病による障害、発達障害のある人など、手帳を所持していなくても支援が必要な人は少なくありません。

 昨年11月、市議会の危機管理研修会でびわこ学院大学の烏野猛教授にご講演いただきました。2016年の熊本地震では、熊本市や市社会福祉協議会などが、2013年に「福祉避難所等の設置運営マニュアル」を完成させていたにもかかわらず、人手不足や水道等のインフラが使えない、施設の環境が整っていない等の理由で、発災から1週間たっても、福祉避難所は2割も開設できず、実質機能しなかったことを伺いました。

 また、12月の市議会防災対策特別委員会では、「近年の災害における要配慮者の避難実態と課題及び福祉避難所について」、龍谷大学筒井のり子教授にご講演いただき、後に「熊本学園モデル」として全国的に知られることとなった、熊本地震の際の、熊本学園大学の取り組みを伺いました。障害特性による課題や、福祉避難所の課題について深める中で、そもそもの避難所のあり方を改めて見直すべきであることを、参加した議員一同共通の認識としたと考えています。

 熊本学園大学は、指定避難所ではありませんでしたが、学内に障害のある学生や教職員が常におられ、バリアフリーの施設で、障害のあるなしにかかわらず学ぶことのできる場所でした。発災直後から近隣住民だけでなく、災害弱者といわれる高齢者や障害者、ペット同伴者などを断ることなく受け入れて支援されました。

 この写真は、熊本学園大学から公開の許可を得てご提供いただいたものです。避難所となった552名を収容できる14号館のホールは、障害者や高齢者など、介助が必要な方のスペースとなりました。照明設備を降ろしてシーツをかけ、男女の間仕切りとしました。

   

 次は、ホールも含めた見取り図です。情報の保障はもちろんのこと、女子更衣室や乳幼児室、犬や猫と避難された方の部屋など、様々に工夫し配慮されました。

 一時は、一般の避難者700名、障害者60名、車中泊者100名を受け入れ、この方々を24時間態勢で支えたのは、社会福祉学部を中心とする教職員と450人を超える学生ボランティア、医師、看護師、介護職の専門家たちでした。さらに、障害者団体や福祉機関から応援を得て、24時間態勢を維持しました。運営にあたっては「管理はしないが、配慮はする」をモットーに、大学の授業再開時にも「避難所は大学の都合で閉じない」という方針が出され、最後のひとりまですべての避難者の行き先が決まるまで寄り添い支援し、45日間に及ぶ避難所は閉じられました。

 熊本学園大学震災避難所運営の記録には、「震災が起きてから奇跡が起きることはない。震災前、どういう大学だったか、どういう学校だったか、どういう公民館だったか、災害が起きた時に見えてくる。」と、記されています。

 さて、ひるがえって大津市の現状はどうでしょうか。行政の最大の使命は、「住民の生命と財産を守ること」にあります。いつ起きるかわからない自然災害に備えて、それに耐えられるしなやかな社会をつくること、すなわち、誰もが被災者になるという前提で、日頃から地域福祉を充実させ、ゆとりある寛容な社会を築くことが最大の防災であると考え、以下順次質問いたします。

 まず、福祉避難所の課題について、お尋ねします。

 「福祉避難所」は、一次避難所である「指定避難所」とは違い、発災直後には開設されません。本市においても、災害が発生して、避難が必要な場合は、とりあえずあらかじめ決められた「指定避難所」に避難し、介護の必要な高齢者や障害者など一般の避難所では生活に支障を来す人に対してケアを行うため、必要と判断された場合に、二次的な避難所として開設するということです。

 災害時の電源喪失は、人工呼吸器や痰の吸引、在宅酸素などの医療的ケアが必要な人たちにとって、命にかかわる問題です。

    医療的ケアが必要な人への対応は、緊急を要するため、福祉避難所の開設を待つことができません。どのような対策がとられているのか伺います。

部長答弁【所属:長寿政策課】

 福祉避難所の課題についてのうち、1点目の医療的ケアが必要な人への対応についてでありますが、在宅で人工呼吸器・酸素ボンベ・たん吸引器等を使用されている方につきましては、平時から災害時の停電等への備えとして、予備のバッテリーやボンベを準備しておいていただくように、また、指定難病医療受給者や要介護認定者等には個別サービス調整会議の際に、また、小児慢性特定疾病医療受給者の方には保健師が自宅訪問した際に、ご本人・ご家族に災害時の備えについてお知らせしております。

 また、医療的ケアを受けておられる方の災害時の備えについての災害対策従事者研修会をケアマネジャー、訪問看護師、ヘルパー等を対象に開催しております。

 

    本市では、福祉避難所に指定された施設の多くが児童クラブや保育園です。保護者からは就労や生活再建のために、発災後できるだけ早く保育の再開を求められることが考えられます。一定期間が必要とされる福祉避難所として、指定された経緯を伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】 

 2点目の福祉避難所として指定された経緯についてでありますが、平成28年内閣府作成の福祉避難所の確保・運営ガイドラインに基づき、「バリアフリーであり、支援者をより確保しやすい施設」に合致しており、さらに指定避難所からの利便性を考慮した、身近にある児童クラブ・保育園・その他福祉施設を福祉避難所として市内の30箇所を指定しております。これらの施設については、施設管理者や施設利用者の理解が得られ、平時からの災害対応についても連携を図っております。

 

    福祉避難所として指定されている市内30カ所のどの施設にも、日常的に障害者や要介護高齢者の対応を行っているスタッフはいません。福祉避難所の開設には、支援者の確保が不可欠です。支援者の確保も含め、避難所の開設にどの程度の日数がかかると見込んでいるのか伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 3点目の避難所の開設にどの程度の日数がかかると見込んでいるのかについてでありますが、発災後は市職員も被災者になることが考えられ、平成28年に策定しました大津市業務継続計画では、発災当初は約半数の職員しか確保することが出来ないと想定しております。また、福祉避難所を運営するには一般的な避難所よりさらに、保健師等の専門的な人材が必要で、市職員のみならず、民生委員や福祉関係者の協力が必要であり、さらには全国からの支援スタッフやボランティアの受け入れ体制が整った後に福祉避難所を開設することから、概ね3日程度はかかると考えております。

 

    熊本地震の際も、福祉避難所はほとんど機能しませんでした。これからさらに進む超高齢化社会を踏まえて、課題をどのように認識されているか伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 4点目の福祉避難所において、超高齢化社会を踏まえて、課題をどのように認識しているかについてでありますが、議員お述べのとおり、熊本地震でも福祉避難所が上手く機能しなかった事例は把握しており、福祉避難所施設の倒壊や、協定を締結している福祉施設においても受け入れ体制が早期に整わず176施設のうち34施設のみの受け入れとなり、北九州市に福祉避難所の設置を要請したことを確認しております。

 当市においても市町村域を超えた区域での対応について検討していくことが必要と考えており、超高齢化社会により今後ますます要配慮者が増えていくことで避難所の受け入れスペースの確保が課題となると考えております。そういったことから、福祉避難所の運営や避難のあり方については、特に福祉事業所との連携とともに地域の防災力の向上が重要と考えております。

 

 次に、指定避難所に関わる課題について、お尋ねします。

本市の指定避難所は、災害の危険性があり避難した住民等や、災害により家に戻れなくなった住民等が滞在するための施設として、市内214カ所の学校や園、市民センターなどの施設を指定しています。

 一次避難所である指定避難所は、基本的な考え方として、地域の人たちをそのまま受け入れなければなりません。「障害があるから」「介助が必要だから」「ペットがいるから」ということを理由にして断れば、その人たちはたちまち行き場所がなくなってしまいます。障害者差別解消法でいう「合理的配慮」で、指定避難所に「居場所をつくる」ことが大切です。

    一次避難所である指定避難所が、地域の誰も排除しない避難所であるためには、指定されたすべての施設のバリアフリー化が喫緊の課題です。バリアフリー化の現状を伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 1点目の指定避難所のバリアフリー化の現状についてでありますが、現在大津市の指定避難所181箇所のうち、多目的トイレやスロープが設置されている施設は127箇所あり、中でも災害時主に避難所として開設する市立小中学校では55校中41校に多目的トイレやスロープが設置されており、残りの14校中スロープのみの設置が11校で、多目的トイレ及びスロープの設置が出来ていないのが3校となっております。

 

    181カ所の指定避難所の内、中心になると考えられるのが55カ所の小・中学校です。今年度中の策定が予定されている「おおつ障害者プラン」案においても、建築物の整備の主な事業に、小・中学校のバリアフリー化を掲げています。どのように進めていかれる予定か、伺います。

教育長答弁【所属:教育総務課】

指定避難所に関わる課題についてのうち、2点目の小・中学校のバリアフリー化をどのように進めていくかについてでありますが、現在、小・中学校においては、移動に支援を要する児童・生徒が入学される場合に、各学校と相談したうえで、エレベータの設置や、多目的トイレの整備、段差の解消等の整備を行っております。さらに、大規模改修の機会に、学校施設の状況に応じて、必要なバリアフリー化を進めており、今後も同様に対応してまいりたいと考えております。

 

    京都府では、障害者や難病者など要配慮者の当事者団体からの意見を反映し、誰もが安心して過ごせる避難所をめざして「福祉避難コーナー設置ガイドライン」を作成され、総合防災訓練での活用など、周知に取り組んでおられます。本市では、「大津市防災計画」の下位計画として、避難支援に関する事項を具体化した「大津市避難行動要支援者避難支援プラン」が策定されていますが、支援を必要とする人たちの意見はどのように反映し、実行されているのか伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 3点目の支援を必要とする人たちの意見はどのように反映し、実行されているのかについてでありますが、「大津市避難行動要支援者避難支援プラン」につきましては、作成段階から各関係所属を通じて要配慮者の配慮事項を集約し、反映して作成しております。また、反映された意見につきましては、大津市総合防災訓練において、体育館での福祉スペースの設置、空き教室を利用しての福祉室の設置、多様な避難者に対応できる支援訓練を計画しており、さらには地域の老人福祉施設との連携、搬送訓練を実施しております。また、学区の避難所運営訓練の中で福祉スペースの設置や、避難行動要支援者に対する対応訓練などを実施し、プランの実効性を検証しております。

 

    避難訓練においても、多様な避難者を想定し福祉避難室や福祉避難コーナーなどの設置に加えて、要支援者とともに訓練を積み重ねることや周知が大切です。現状と課題を伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 4点目の避難訓練での要支援者対応と訓練における現状と課題についてでありますが、議員お述べのとおり、要配慮者の方々と共に訓練をしていくことは非常に重要と考えており、先の質問でもお答えしたとおり、防災訓練や各学区等で実施している訓練を積み重ねることが重要と考え、防災訓練を始め各学区の訓練で要配慮者に対する対応訓練を積極的に計画しております。

 課題については、大津市総合防災訓練や各学区の防災訓練等で、要配慮者の参加が少ないことと認識しており、今後は、より多くの要配慮者に訓練参加していただけるよう、災害時の対応について支援者、要配慮者ともに周知に努めてまいります。

 

 続いて、その他の防災に関わる課題についてお尋ねします。

 自治体には、避難行動要支援者名簿の作成・共有・政策実行の義務があります。高齢者・障害者・乳幼児、その他特に配慮を要する妊婦や外国人など、必要とされる方へ漏れのない支援が求められますが、変化する要支援対象者を正確につかむことは容易ではありません。

作成された個別支援計画も、マッチングされた支援者と要支援者がお互いに顔を知らなかったり、何年か前に一度会っただけという状況があることも伺っており、およそ現実的ではありません。地域の中で孤立させない様々な取り組みこそが、防災・減災にとっても重要です。

 筒井教授のご講演でも、地域住民の日頃のつながりや、地域活動のための小学校区単位でのネットワークが大切とのお話がありました。一方で、熊本学園大学の記録には、被災住民による自治的な運営が可能になるのは安定的な時期に入ってからで、住民主体の運営は、容易なことではないと記されています。

 この間、誰も排除しない避難所のあり方を学ぶ中で、改めて、各小学校区にある市民センターの防災拠点としての重要性と、本市の財産ともいうべき地域と行政をつなぐ支所職員の役割の大きさを認識したところです。

    避難行動要支援者名簿の適正管理も含め、高齢化に向かう地域社会において各小学校区の支所職員の役割をどのように認識されているのか伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 1点目の支所職員の役割をどのように認識されているのかについてでありますが、支所職員は、現時点の体制として災害時に、初動支所班の一員として、災害対策本部と地域とのパイプ役となり、災害対策本部に情報を受発信する等を行ないます。

 

     大津市は、総合計画の施策のひとつとして「大学を生かしたまちづくり」を掲げており、これまで近隣の大学と協力に関する協定を締結し、連携強化と協力体制の拡充を図っているところです。熊本学園大学の事例を教訓にして、平時から市内の大学と災害時における連携・協力体制を整えておくことが必要ではないかと考えますが、見解を伺います。

部長答弁【所属:危機・防災対策課】

 2点目の熊本学園大学の事例を教訓にして、平時から市内の大学と災害時における連携・協力体制を整えておくことが必要でないかについてでありますが、本市では、大津市地域防災計画に基づき、指定避難所として滋賀短期大学を、さらに、災害時の物資集積場所としてびわこ成蹊スポーツ大学、成安造形大学、滋賀大学を指定している他、大津市防災会議委員や大津市国民保護協議会委員としても、大学に意見やアドバイスをいただいており、大学との連携・協力体制を図っております。

 

※分割質問でまとめての答弁でしたが、分かりやすいように初問質問ごとに答弁を記載しました。録画中継は、下記からご覧いただけます。

http://www.kensakusystem.jp/otsu-vod/cgi-bin4/ResultFrame.exe?Code=nf8og6fxgd1mgw3j7u&fileName=H300306TEIREI

calendar

S M T W T F S
   1234
567891011
12131415161718
19202122232425
262728293031 
<< August 2018 >>

林まりfacebook

selected entries

categories

archives

links

profile

search this site.

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM